社会福祉士とは
社会福祉士は、昭和62年に制定された 「社会福祉士及び介護福祉士法」で位置づけられた、社会福祉業務に携わる人の国家資格です。
身体や精神の障がいあるいは環境上の理由などにより日常生活を営むことに支障がある人の福祉に関する相談援助を行う専門職の国家資格です。
社会福祉士の活躍する職場は、地域包括支援センター、在宅介護支援センター、各種社会福祉施設、介護老人保健施設、病院、社会福祉協議会、福祉事務所・身体障害者更生相談所・児童相談所その他行政機関など多岐にわたっています。
福祉施設では「生活相談員」「生活支援員」「児童指導員」や、児童福祉司・身体障害者福祉司などの公務員、社会福祉協議会の福祉活動専門員、在宅介護支援センターのソーシャルワーカー職、介護老人保健施設の支援相談員、病院等の医療相談員などがあげられます。
社会福祉士資格は、国家資格ですが医師や弁護士のように「業務独占」の資格でなく、「名称独占」の資格です。
「名称独占」とは、資格をもたない者が、「社会福祉士」という名称を勝手に使用してはならないということで、社会福祉士資格を持っていなければ就けない職種は現在のところありませんが、求人には、社会福祉士資格取得を条件としたり、希望しているケースが増えています。
社会福祉士資格をもっていることは、専門職としての水準の高さを表すものであり、今後有資格者が増加すれば、将来的に実質的な業務独占状態になることが考えられます。
受験資格は、福祉系の大学で指定科目を履修するか、一般大学卒業後、もしくは実務経験4年以上で、厚生大臣の指定する養成施設を卒業すると与えられます。
社会福祉士が活躍する現場
◆障がい分野◆
障がい者分野は、介護保険でなく、2013年4月より施行された「障害者総合支援法」で諸制度が運用されています。この新しい法律の目的は、「障害児・者が、自立した日常生活又は社会生活を営むことができるよう、必要な障害福祉サービスに係る給付その他の支援を行い、もって障害者及び障害児の福祉の増進を図るとともに、障害の有無にかかわらず国民が相互に人格と個性を尊重し安心して暮らすことのできる地域社会の実現に寄与することを目的とする」です。
この様な共生社会の実現をめざし、行政(大阪府、各市町村)、社会福祉協議会(府・各市町村)、福祉・医療・宗教法人、NPO等の、各機関に所属する職員であるところの社会福祉士が、お互いに連携協力し合いながら業務を行っています。
同時に、多職種によるチームで利用者支援に当たる際には、社会福祉士はケアマネージャーの様な役割を担います。行政から、現場の各施設まで、多くの職場に社会福祉士である職員が在籍しております。みなさん、ご相談の際は、各機関の社会福祉士を頼ってみてください。
◆高齢分野◆
特別養護老人ホームで働く社会福祉士は、生活相談員として働いています。特別養護老人ホームには、施設長・介護支援専門員・生活相談員(社会福祉士)・看護師・介護職(介護福祉士)・機能訓練指導員・管理栄養士など多数の専門職が配置されています。
生活相談員は、ご利用者様の生活相談およびご家族様の入所相談が主な仕事です。施設のご利用者様やそのご家族様の相談に応じて支援方法を調整し、ご利用者様お一人おひとりに合わせた快適な生活が送れるように、環境の整備を行っています。またご利用者様のニーズに応じた支援方法を実行するため、施設内の職員の他にも、外部機関や地域関係者との連絡・調整も生活相談員の仕事になります。
特別養護老人ホームのご利用者様の多くが、施設は自らの人生の最後を飾る場所でもあります。そのためご利用者様とは何年にもわたり支援に携わらせて頂くことになるので、日々の関わりの積み重ねが信頼関係につながります。
◆医療分野◆
病院でも社会福祉士は、主に医療ソーシャルワーカー(MSW)と呼ばれ、さまざまな相談に応じています。
ご自身やご家族が重い病気になったり入院が必要になったりしたとき、病気以外の心配事で治療に専念できないことがあります。医療費だけでなく、収入が途絶えることによって生活費等にも支障が出るといった経済的なことや、親の介護、子どものことなど、さまざまな生活上の不安や問題について、頼りになるのが病院の社会福祉士;医療ソーシャルワーカーです。
医療ソーシャルワーカーは、社会福祉の専門家としての立場からご本人やご家族からの相談に応じ、経済的・心理的・社会的な問題に一緒に取り組んでいきます。患者さんは赤ちゃんから高齢者、障がい者の方等、多岐に亘ります。必要に応じて医師や看護師、介護関係のみでなく行政等とも連携して問題解決を図る手助けをします。また、安心して退院ができるよう、ご本人・ご家族と相談しながら、地域の医療機関や介護施設等と連携し、在宅や転院・入所に向けての調整をします。
受診・入院から退院まで、安心して療養を続けていただくために、困ったことがあればお気軽に医療ソーシャルワーカーにご相談ください。
◆教育分野◆
スクールソーシャルワーカー(SSW)とは、教育分野において福祉の視点を取り入れた支援を行うべく配置された専門職です。
主に本人、保護者に問題意識がない、または拒否を示され、問題を学校だけで解決するのは困難であるケースに介入します。表面化した事象としては不登校、非行、いじめ等様々ですが、その背景に発達上の課題があるのか、家庭や学校での環境に課題があるのかを見分けることが重要です。発達障がいによる二次障がいと虐待の見分け方は難しいですが、見分けのポイントは、発達障がいがいつでもどこでもその特性が見られ、虐待は時と場合によって全く違った特徴を表すことです。
そのため、その子を取り巻く環境や過去を含めたアセスメント、強みを活かした支援計画と役割分担、二次障がいを予防する体制づくりを、支援チーム、ひいては校内体制が効果的に機能するように、ケース会議や校内研で虐待研修を行います。常時配置ではない為、家庭訪問や、面接を主体とする直接支援はSSWが単独で行わず、担任やコーディネーターが主体となって動くことが基本です。また、虐待が疑われるケースについては、様々な関係機関が集まって虐待の予防、見守りなどをするネットワークである要保護児童対策地域協議会にあげ、市(区)の家庭児童相談室、市教委、児童相談所等を含めたケース会議を開いて、具体的な支援方法を決めていきます。
◆地域包括支援センター◆
地域包括支援センターは、高齢者が住み慣れた地域で安心した生活を続けられるように支援を行い、高齢者福祉に関する総合的な相談を受けています。介護が必要な状態とならないように予防的なサービスを適切に確保するとともに、介護が必要となっても、ご希望や心身の状態の変化に応じて、サービスが切れ目なく提供される体制を作る業務を行っています。地域包括支援センターには、主任ケアマネジャー、保健師、社会福祉士などが配置されていて、それぞれの専門性を活かし、介護・福祉・保健・医療など多くの関係機関と連携を図りながら、高齢者の暮らしを支えています。
中でも社会福祉士は、相談業務や権利擁護に必要不可欠です。電話、窓口、訪問など色々な形で高齢者やその家族、地域住民などから高齢者の生活に関わる相談を受け、適切なサービスに繋いでいきます。また、高齢者虐待や悪質な訪問販売等によって、高齢者の尊厳や権利が奪われないように、その防止や予防に取り組み、必要に応じて成年後見制度などへ繋いでいきます。このように高齢者の権利を擁護する業務を中心に社会福祉士が活躍しています。
◆地方公共団体◆
地方公共団体においては、社会福祉法第14条に規定される福祉に関する事務所(福祉事務所)にて、社会福祉六法(生活保護法、児童福祉法、身体障害者福祉法、知的障害者福祉法、老人福祉法、母子及び寡婦福祉法)に基づく、援護・育成・更生の措置に関する事務を行っています。また、福祉六法に加え、介護保険法・障害者自立支援法・地域保健法・売春防止法等も兼務しています。
福祉事務所職員の構成は、福祉事務所長・査察指導員(スーパーバイザー)・現業員(ケースワーカー) ・事務担当職員(福祉庶務)があり、他にも、身体障がい福祉司・知的障がい福祉司・老人福祉主事・家庭児童福祉主事・母子自立支援員(女性相談員)という担当員がいます。
福祉事務所における社会福祉士としての役割は、相談援助における専門職として、利用者の相談に応じ福祉関連の業務に携ること、福祉事務所職員への福祉に関する技術指導を行うこと、生活の現状と福祉のニーズを把握する業務であり、社会福祉・社会保障の実務を担っております。
また、利用者への直接援助のみならず、各関係機関に対しても、瞬時の判断力・技術の卓越性・人権における理解・相手へのヒューマニズム・状況に応じた的確な連絡・調整等の連携業務を行うことが重要です。
これからの福祉は、地域の様々な立場の人と関わり、それぞれの立場でできることを出し合って支援していくことが重要であり、そのネットワークづくりの調整の要が福祉事務所といえます。
◆成年後見人等◆
成年後見制度には、「法定後見」と「任意後見」があります。その内「法定後見」には、本人の判断能力の程度や事情に応じて「後見」、「補佐」、「補助」の3つの類型があり、この制度は、家庭裁判所によって選ばれた成年後見人等(成年後見人・保佐人・補助人)が、心身の障がいや認知症等で判断能力が十分でなくなった方のために、その生活や利益を守りながら、生活や法律上の手続き(福祉サービスや施設入所の契約・財産管理・相続の手続き・不動産の売買等)をサポートする制度です。また判断能力が不十分なため、自分に不利益な契約をしたり、悪徳商法などの被害にあわないよう、成年後見人等が本人に代わって、法律行為を代行したり、不利益な契約を取り消すなどし、本人を保護、支援する制度でもあります。
成年後見人制度を利用される方は、様々な障がいを抱える方が多いのが実情であり、その生活や利益を守る上で、医療、保健、福祉、介護サービスの利用は欠かせないものとなっております。そこで福祉のスペシャリストである「社会福祉士」が、法律のスペシャリストである弁護士、司法書士とともに、お互い連携しながら成年後見人等として活躍しております。
◆児童相談所◆
児童相談所とは、子どもに関する相談への対応・措置等を行なう行政機関です。児童相談所では、多数の社会福祉士が活躍しています。
近年では、社会情勢の厳しさから、子どもや家庭を取り巻く環境も著しく変化しています。大阪においては、府外からの転入者が多く、そのため育児の協力者を得にくい等といった、都市部ならではの課題もあります。このような背景から、児童相談所に寄せられる相談は、実に多岐にわたっています。
相談の中には、「子どもを育てられない。今から預かってほしい」「子どもに手を出し、怪我をさせてしまった」等といった、早急な対応を迫られる事案もあります。多様な相談に対し、子どもや世帯が抱える課題、特徴、強みを多角的に分析し、支援を行っていく援助技術が児童相談所の職員には求められています。
子どもの成長過程において、家庭の果たす役割は大きいものがあります。家庭と同様に、地域社会や学校・保育園・幼稚園等も、子どもの成長に重要な役割を果たしています。これらが十分に機能していない場合、児童相談所はこれらに対して働きかけを行っていきます。例えば、子どもに対し育児放棄等の不適切な養育が行われている世帯に対し、他機関と協同して、子どもの見守りを行うことがあります。この例のように、特に児童虐待の対応に関しては、他機関との連携が求められています。
時代の推移とともに、児童相談所の役割は変化しており、相談援助の専門家である社会福祉士が、力を発揮できる職場の一つであると思います。
社会福祉士になるためには
社会福祉士になるためには、厚生大臣が指定した指定試験機関である(公財)社会福祉振興・試験センターが実施する「社会福祉士国家試験」に合格しなくてはなりません。 この国家試験を受験するためには、法律に定められた受験資格が必要です。
受験資格を得る方法には、大きく分けて次の8種類のコースにわかれます。
1. 福祉系大学(4年制)などを卒業した者
1. 厚生大臣が指定する科目を履修して卒業した場合(法第7条第1号)
2. 厚生大臣が指定する科目のうち、基礎科目を履修して卒業し、
かつ、短期養成施設など・通信課程を修了した場合(法第7条第2号、ただし短期
養成施設は現在ありません)
2. 福祉系短大などを卒業した者
(1) 福祉系短期大学(3年制の専修学校など)を卒業した者
1. 厚生大臣が指定する科目を履修して卒業し、かつ、1年間の実務
経験( 指定施設における指定業務経験)のある場合(法第7条第4号)
2. 厚生大臣が指定する科目のうち、基礎科目を履修して卒業し、
1年間の実務経験(指定施設における指定業務経験)があり、かつ、短期養成施設
など・通信課程(6カ月)を修了した場合(法第7条第5号、ただし短期養成施設は
現在ありません)
(2) 福祉系短期大学(2年制)を卒業した者
1. 厚生大臣が指定する科目を履修して卒業し、かつ、2年間の実務経験
(指定施設における指定業務経験)のある場合(法第7条第7号)
2. 厚生大臣が指定する科目のうち、基礎科目を履修して卒業し、
2年間の実務経験(指定施設における指定業務経験)があり、かつ、短期養成施設
など・通信課程(6カ月)を修了した場合
(法第7条第8号、ただし短期養成施設は現在ありません)
(3) 法的職種を経験した者
5年以上、児童福祉司、身体障害者福祉司、知的障害者福祉司、老人福祉指導主事、査察指導員の経験がある場合(法第7条第11号)
(4) 一般大学(4年制)を卒業した者
一般養成施設・通信課程(1年以上)を修了した場合(法第7条第3号)
(5) 一般系短期大学(3年制の専修学校等)を卒業した者
1年間の実務経験( 指定施設における指定業務経験)があり、かつ、一般養成施設など・通信課程(1年以上)を修了した場合(法第7条第6号)
(6) 一般系短期大学(2年制)を卒業した者
2年間の実務経験( 指定施設における指定業務経験)があり、かつ、一般養成施設など・通信課程(1年以上)を修了した場合(法第7条第9号)
(7) 上記(1)~(6)に該当しない者
4年間の実務経験(指定施設における指定業務経験)があり、かつ、一般養成施設など・通信課程(1年間)を修了した場合(法第7条第10号)
※ 詳しくは、
(公財)社会福祉振興・試験センターのWEBサイトにてご確認ください。