行動規範

社会福祉士の行動規範

2021年3月20日採択
 行動規範は倫理綱領を行動レベルに具体化したものであり、社会福祉士が倫理綱領に基づいて実践するための行動を示してあります。行動規範は、倫理綱領の各項目 を総体的に具体化したものと、個別の行動として具体化したもので構成されています。

Ⅰ.クライエントに対する倫理責任

1.クライエントとの関係

 社会福祉士は、クライエントとの専門的援助関係を最も大切にし、それを自己の利益のために利用してはならない。

  1. 1−1社会福祉士はクライエントに対して、相互の関係は専門的援助関係に基づくものであることを説明しなければならない。
  2. 1−2社会福祉士は、クライエントとの専門的援助関係を構築する際には、対等な協力関係を尊重しなければならない。
  3. 1−3社会福祉士は、専門職としてクライエントと社会通念上、不適切と見なされる関係を持ってはならない。
  4. 1−4社会福祉士は、自分の個人的・宗教的・政治的な動機や利益のために専門的援助関係を利用してはならない。
  5. 1−5社会福祉士は、クライエントと利益相反関係になることが避けられないときは、クライエントにその事実を明らかにし、専門的援助関係を終了しなければならない。その場合は、クライエントを守る手段を講じ、新たな専門的援助関係の構築を支援しなければならない。

2.クライエントの利益の最優先

 社会福祉士は、業務の遂行に際して、クライエントの意思を尊重し、その利益の最優先を基本にしなければならない。

  1. 2−1社会福祉士は、専門職の立場を私的に利用してはならない。
  2. 2−2社会福祉士は、クライエントから専門職としての支援の代償として、正規の報酬以外に物品や金銭を受けとってはならない。
  3. 2−3社会福祉士は、支援を継続できない何らかの理由が生じた場合、必要な支援が継続できるように最大限の努力をしなければならない。

3.受容

 社会福祉士は、クライエントに対する先入観や偏見を排し、クライエントをあるがままに受容しなければならない。

  1. 3−1社会福祉士は、クライエントを尊重し、あるがままに受け止めなければならない。
  2. 3−2社会福祉士は、自身の価値観や社会的規範によってクライエントを非難・審判することがあってはならない。

4.説明責任

 社会福祉士は、クライエントが必要とする情報を、適切な方法やわかりやすい表現を用いて提供しなければならない。

  1. 4−1社会福祉士は、クライエントの側に立って支援を行うことを伝えなければならない。
  2. 4−2社会福祉士は、クライエントが自身の権利について理解できるよう支援しなければならない。
  3. 4−3社会福祉士は、クライエントが必要とする情報を十分に説明し、理解できるよう支援しなければならない。
  4. 4−4社会福祉士は、自身が行う実践について、クライエントだけでなく第三者からも理解が得られるよう説明できなければならない。

5.クライエントの自己決定の尊重

 社会福祉士は、クライエントの自己決定を尊重して支援しなければならない。

  1. 5−1社会福祉士は、クライエントが自己決定の権利を有する存在であると認識しなければならない。
  2. 5−2社会福祉士は、クライエントが選択の幅を広げることができるように、必要な情報を提供し、社会資源を活用しなければならない。
  3. 5−3社会福祉士は、クライエントの自己決定に基づく行動が自己に不利益をもたらしたり、他者の権利を侵害すると想定される場合は、その行動を制限することがあることをあらかじめ伝えなければならない。また、その場合は理由を具体的に説明しなければならない。

6.参加の促進

 社会福祉士は、クライエントが自らの人生に影響を及ぼす決定や行動のすべての局面において、完全な関与と参加を促進しなければならない。

  1. 6−1社会福祉士は、クライエントが自らの人生に影響を及ぼす決 定や行動の局面への関与や参加から排除されがちな現状について認識しなければならない。
  2. 6−2社会福祉士は、クライエントの関与と参加を促進するために、クライエントの自尊心と能力を高めるよう働きかけなければならない。
  3. 6−3社会福祉士は、クライエントの関与と参加に向けて、必要な情報や社会資源を提供したり、機会やプロセスを形成することに貢献しなければならない。

7.クライエントの意思決定への対応

 社会福祉士は、クライエントの利益と権利を擁護するために、最善の方法を用いて意思決定を支援しなければならない。

  1. 7−1社会福祉士は、クライエントを意思決定の権利を有する存在として認識しなければならない。
  2. 7−2社会福祉士は、クライエントの意思決定能力をアセスメントしなければならない。
  3. 7−3社会福祉士は、クライエントの意思決定のためにクライエントの特性や状況を理解し、その特性や状況に応じた最善の方法を用いなければならない。

8.プライバシーの尊重と秘密の保持

 社会福祉士は、クライエントのプライバシーを尊重し、秘密を保持しなければならない。

  1. 8−1社会福祉士は、クライエントが自らのプライバシーの権利を認識できるように働きかけなければならない。
  2. 8−2社会福祉士は、クライエントの情報を収集する場合、クライエントの同意を得なければならない。ただし、合理的な理由がある場合(生命、身体又は財産の保護のために緊急に必要な場合など)は、この限りではない。
  3. 8−3社会福祉士は、業務の遂行にあたり、必要以上の情報収集をしてはならない。
  4. 8−4社会福祉士は、合理的な理由がある場合を除き、クライエントの同意を得ることなく収集した情報を使用してはならない。
  5. 8−5社会福祉士は、クライエントのプライバシーや秘密の取り扱いに関して、敏感かつ慎重でなければならない。
  6. 8−6社会福祉士は、業務中であるか否かにかかわらず、また業務を退いた後も、クライエントのプライバシーを尊重し秘密を保持しなければならない。
  7. 8−7社会福祉士は、記録の取り扱い(収集・活用・保存・廃棄)について、クライエントのプライバシーや秘密に関する情報が漏れないよう、慎重に対応しなければならない。

9.記録の開示

 社会福祉士は、クライエントから開示の要求があった場合は、原則として記録を開示しなければならない。

  1. 9−1社会福祉士は、クライエントが記録の閲覧を希望した場合は、特別な理由なくそれを拒んではならない。
  2. 9−2社会福祉士は、クライエント自身やクライエントを取り巻く環境の安全が脅かされると想定する場合は、その限りではない。

10.差別や虐待の禁止

 社会福祉士は、クライエントに対していかなる差別や虐待も行ってはならない。

  1. 10−1社会福祉士は、クライエントに対して肉体的・精神的苦痛や損害を与えてはならない。
  2. 10−2社会福祉士は、差別や虐待を受けている可能性があるクライエントを発見した場合、すみやかに対応しなければならない。
  3. 10−3社会福祉士は、差別や虐待について正しい知識を得るようにしなければならない。
  4. 10−4社会福祉士は、クライエントが差別や虐待の状況を認識できるよう働きかけなければならない。

11.権利擁護

 社会福祉士は、クライエントの権利を擁護し、その権利の行使を促進しなければならない。

  1. 11−1社会福祉士は、クライエントの権利について十分に認識し、敏感かつ積極的に対応しなければならない。
  2. 11−2社会福祉士は、クライエントの権利が擁護されるよう、環境に働きかけなければならない。
  3. 11−3社会福祉士は、クライエントの権利擁護について積極的に啓発しなければならない。
  4. 11−4社会福祉士は、クライエントが自身の権利を自覚し、適切に行使できるよう支援しなければならない。

12.情報処理技術の適切な使用

 社会福祉士は、業務を遂行するにあたり情報処理技術を適切に使用しなければならない。

  1. 12−1社会福祉士は、クライエントの権利を擁護するために、情報リテラシーを高める必要があることを自覚しなければならない。
  2. 12−2社会福祉士は、情報処理に関する原則やリスクなどの最新情報について学ばなければならない。
  3. 12−3社会福祉士は、各種の情報媒体を適切に利用し、必要な情報を収集・整理し、活用しなければならない。
  4. 12−4社会福祉士は、情報処理技術(デジタル化された情報、デジタル・ネットワークを活用した情報の収集・拡散を含む)が、クライエントの権利を侵害することがないよう、細心の注意を払わなければ ならない。
  5. 12−5社会福祉士は、クライエントの情報を電子媒体などにより取り扱う場合、厳重な管理体制と最新のセキュリティに配慮しなければならない。また、クライエントの個人情報の乱用・紛失その他あらゆる危険に対し、安全保護に関する措置を講じなければならない。
  6. 12−6社会福祉士は、クライエントが SNS の利用などにより権利を侵害された場合は、情報処理技術や法律などの専門職と連携して、その回復に努めなければならない。

Ⅱ.組織・職場に対する倫理責任

1.最良の実践を行う責務

 社会福祉士は、所属する組織・職場の基本的な使命や理念を認識し、最良の実践を行わなければならない。

  1. 1−1社会福祉士は、所属する組織・職場における専門職としての使命と職責を認識しなければならない。
  2. 1−2社会福祉士は、本倫理綱領に基づき、所属する組織・職場における専門職としての職責を果たさなければならない。

2.同僚などへの敬意

 社会福祉士は、同僚や上司・部下の職責や専門性の違いを尊重し、敬意を払って接しなければならない。

  1. 2−1社会福祉士は、同僚や上司・部下の職責を理解し、所属する組織・職場での意思疎通が円滑に行われるよう働きかけなければならない。
  2. 2−2社会福祉士は、同僚や上司・部下の専門性を尊重し、連携・協働を図らなければならない。

3.倫理綱領の理解の促進

 社会福祉士は、自らが所属する組織・職場において本倫理綱領および行動規範が適切に理解されるよう働きかけなければならない。

  1. 3−1社会福祉士は、所属する組織・職場において本倫理綱領に基づいた実践を行うことによって、専門性を示さなければならない。

4.倫理的実践の推進

 社会福祉士は、組織・職場において、本倫理綱領に基づいた倫理的実践を推進しなければならない。

  1. 4−1社会福祉士は、所属する組織・職場の方針、規則、手続き、業務命令などを本倫理綱領に沿って適切かどうかを把握しなければならない。
  2. 4−2社会福祉士は、所属する組織・職場の方針、規則、手続き、業務命令などが本倫理綱領に反する場合は、適切・妥当な方法・手段によって提言し、改善を図らなければならない。

5.組織内アドボカシーの促進

 社会福祉士は、組織・職場におけるあらゆる虐待、差別的・抑圧的な行為、ハラスメントを認めてはならない。

  1. 5−1社会福祉士は、組織・職場においてあらゆる虐待、差別的・抑圧的な行為、ハラスメントを認めた場合は、それらの行為が迅速かつ適切に解消するよう対応しなければならない。
  2. 5−2社会福祉士は、組織・職場においてあらゆる虐待、差別的・抑圧的な行為、ハラスメントを防止するための周知・啓発を行い、同僚などへの権利擁護を実現しなければならない。

6.組織改革

 社会福祉士は、人々のニーズや社会状況の変化に応じて組織・職場の機能をアセスメントし、必要な改革を図らなければならない。

  1. 6−1社会福祉士は、人々や地域社会のニーズ、社会状況の変化をアセスメントしなければならない。
  2. 6−2社会福祉士は、人々や地域社会のニーズ、社会状況の変化に照らして組織・職場の機能をアセスメントしなければならない。
  3. 6−3社会福祉士は、組織・職場の機能が人々や地域社会のニーズ、社会状況の変化に対応していない場合には、必要な組織改革を行わなければならない。

Ⅲ.社会に対する倫理責任

1.ソーシャル・インクルージョン

 社会福祉士は、あらゆる差別、貧困、抑圧、排除、無関心、暴力、環境破壊などを認識した場合は、専門的な視点と方法により、解決に努めなければならない。

  1. 1−1社会福祉士は、あらゆる差別、貧困、抑圧、排除、無関心、暴力、環境破壊などに専門的な視点から関心を持たなければならない。
  2. 1−2社会福祉士は、専門的な視点と方法により、クライエントの状況とニーズを社会に発信し、ソーシャル・インクルージョンの実現に努めなければならない。

2.社会への働きかけ

 社会福祉士は、人権と社会正義が守られるよう、人々とともに社会に働きかけなければならない。

  1. 2−1社会福祉士は、社会における人権と社会正義の状況に関心を持たなければならない。
  2. 2−2社会福祉士は、人権と社会正義の増進において変革と開発が必要であるとみなすとき、人々が主体的に社会の政策・制度の形成に参加し、互恵的な社会が実現されるよう支援しなければならない。
  3. 2−3社会福祉士は、集団の有する力を認識し、人権と社会正義の実現のために、人と環境の双方に働きかけなければならない。

3.グローバル社会への働きかけ

 社会福祉士は、人権と社会正義に関する課題についてグローバル社会に働きかけなければならない。

  1. 3−1社会福祉士は、グローバル社会の情勢に関心を持たなければならない。
  2. 3−2社会福祉士は、グローバル社会における文化的社会的差異を認識し、多様性を尊重しなければならない。
  3. 3−3社会福祉士は、出自、人種、民族、国籍、性別、性自認、性的指向、年齢、身体的精神的状況、宗教的文化的背景、社会的地位、経済状況などによる差別、抑圧、支配などをなくすためのソーシャルワーカーの国際的な活動に連帯しなければならない。

Ⅳ.専門職としての倫理責任

1.専門性の向上

 社会福祉士は、最良の実践を行うため必要な資格を所持し専門性の向上に務めなければならない。

  1. 1−1社会福祉士は、研修・情報交換・自主勉強会などの機会を活かして、常に自己研鑽に努めなければならない。
  2. 1−2社会福祉士は、常に自己の専門分野や関連する領域の情報に精通するよう努めなければならない。
  3. 1−3社会福祉士は、自らの実践力を明らかにするために、専門性の向上に合わせて必要な資格を取得しなければならない。

2.専門職の啓発

 社会福祉士は、本倫理綱領を遵守し、専門職として社会的信用を高めるように努めなければならない。

  1. 2−1社会福祉士は、クライエント・他の専門職・市民に社会福祉士であることを名乗り、専門職としての自覚を高めなければならない。
  2. 2−2社会福祉士は、自己が獲得し保持している専門的力量をクライエント・他の専門職・市民に適切な手段をもって伝え、社会的信用を高めるよう努めなければならない。
  3. 2−3社会福祉士は、個人並びに専門職集団として、責任ある行動をとり、その専門職の役割を啓発するよう努めなければならない。

3.信用失墜行為の禁止

 社会福祉士は、専門職としての信用を失墜する行為をしてはならない。

  1. 3−1社会福祉士は、倫理綱領及び行動規範を逸脱する行為をしてはならない。
  2. 3−2社会福祉士は、倫理綱領及び行動規範を遵守し、社会的信用を高めるよう行動しなければならない。

4.社会的信用の保持

 社会福祉士は、専門職としての社会的信用を保持するために必要な働きかけを相互に行わなければならない。

  1. 4−1社会福祉士は、他の社会福祉士の行為が社会的信用を損なう可能性がある場合、その内容や原因を明らかにし、本人に必要な対応を促さなければならない。
  2. 4−2社会福祉士は、他の社会福祉士の行為が倫理綱領および行動規範 を逸脱するとみなした場合は、本人が所属する社会福祉士会や関係機関などに対して適切な対応を取るよう働きかけなけ ればならない。
  3. 4−3社会福祉士は、社会的信用を保持するため、他の社会福祉士と協力してお互いの行為をチェックし、ともに高め合わなければならない。

5.専門職の擁護

 社会福祉士は、専門職として不当な批判を受けることがあれば、連帯してその立場を擁護しなければならない。

  1. 5−1社会福祉士は、専門職として日頃から高い倫理観を持って自らを律しなければならない。
  2. 5−2社会福祉士は、社会福祉士の専門性に対 する不当な批判や扱いに対して、正当性をアピールするなど適切な対応をしなければならない。

6.教育・訓練・管理における責務

 社会福祉士は、専門職として教育・訓練・管理を行う場合、それらを受ける人の専門性の向上に寄与しなければならない。

  1. 6−1社会福祉士は、後進育成にあたっては、対象となる人の人権を尊重しなければならない。
  2. 6−2社会福祉士は、研修や事例検討などの企画・実施にあたっては、その効果が最大限になるように努めなければならない。
  3. 6−3社会福祉士は、スーパービジョンを行う場合、専門職として公正で誠実な態度で臨み、その機能を積極的に活用して社会福祉士の専門性の向上に寄与しなければならない。
  4. 6−4社会福祉士は、業務のアセスメントや人事考課にあたっては、明確な基準に基づいて行い、評価の判断を説明できるようにしておかなければならない。
  5. 6−5社会福祉士は、組織マネジメントにあたっては、職員の働きがいを向上させ、クライエントの満足度を高めるようにしなければならない。

7.調査・研究

 社会福祉士は、調査・研究を行うにあたっては、その目的、内容、方法などを明らかにし、クライエントを含む研究対象の不利益にならないように、最大限の倫理的配慮を行わなければならない。

  1. 7−1社会福祉士は、調査・研究を行うにあたっては、日本社会福祉士会が定める研究倫理に関する規程などに示された内容を遵守しなければならない。
  2. 7−2社会福祉士は、調査・研究の対象者とその関係者の人権に最大限の配慮をしなければならない。
  3. 7−3社会福祉士は、事例研究などにケースを提供するにあたっては、ケースを特定できないように配慮し、その関係者に対して事前に了解を得なければならな い。

8.自己管理

 社会福祉士は、自らが個人的・社会的な困難に直面する可能性があることを自覚し、日頃から心身の健康の増進に努めなければならない。

  1. 8−1社会福祉士は、自身の心身の状態が専門的な判断や業務遂行にどのように影響しているかについて、認識しなければならない。
  2. 8−2社会福祉士は、自身が直面する困難が専門的な判断や業務遂行に影響を及ぼす可能性がある場合、クライエントなどに対する支援が適切に継続されるよう、同僚や上司に相談し対応しなければならない。
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